【湧き水・沢の水を飲む】水を店で買って飲む時代なのだ。ついには買った水を半分も飲まずに捨てる時代にまでなってしまったようだ。子どもの頃、両親について登った山間の田んぼの行き返り、カラカラに乾いた喉。途中にある沢の淵で腹ばいになって顔全体を水につけてゴクゴクと飲んだものだ。背後にそびえる守門の山に降った雪が、配下の山々の栄養豊かな土にろ過され、季節をまたいで麓の谷間に湧き出て沢の源流になる。一年を通じて流れるこの清水は、春先から夏、秋にかけて獣たちや山を訪れる人間たち、麓の田畑、そこに暮らす人間たちの水源として、貴重な命の水である。地元では「大沢」と呼んでいた。都会のカルキ臭い「水道」で命をつなぐ身となった私だが、あの大沢で喉を潤した命の営みを忘れることはない。
【ごみ拾い3,173日目】