【歴史という駅伝の一区間を走っている息子夫婦より】
父は癌を患い先に。母の晩年は認知症が進み、90歳の頃には私たち子どもの顔を忘れ、字も書けなくなっていました。それでも懸命に手紙を書こうとしていましたが、ついに投函されることはありませんでした・・・『前略、父ちゃん、母ちゃん。風になった今は好きな野山や、山ユリの花の間をすり抜けて、ときには我が家の庭までその香りを運んできてくれますね。あなた方が繋いでくれた命のバトンは、いま私たちの手にあります。その私たちも、自分の受け持ち区間の終わりが見えるところまで走ってきました。お蔭様で走りきることができそうです。私たちがバトンを繋ぐその駅には、きっと迎えに来てくださいね。そしてまた・・いえ、こんどこそ親子になりましょう。私も親を経験して、少しは子どもらしくできるようになりましたから。だからついに云えなかった言葉も今度は云えるでしょう・・・「ただいま。ありがとう」と・・・』