【母を叩いた手が痛む・・・】

【母を叩いた手が痛む・・・】
道端に転がったトイレットペーパーのロール。まだ未使用だ。古新聞と交換に置いたものが転がったのだろう。
トイレットペーパーを見ると反射的に思い出す。亡き母が認知症を患い自宅で介護していた頃、田舎育ちの昔の人間なら理解できる「癖」に閉口したものだ。新聞紙で処理していた時代に育った母。野良に出れば「葉っぱ」だ。ティッシュやトイレットペーパーの時代になっても、もったいなくて使えないのだ。用を足しても、ほんの少しだけ切り取っては半分、また半分に折りたたみながら使う。当然、手が汚れ、その手で家じゅうが・・・。仕方なく、寝ていなければ早くて10分ごとにトイレ通いする母の為に、トイレのドアにチャイムをつけ、母を監視。私はペーパーを折りたたんで使おうとする母の手を何度も叩いた・・・。
トイレットペーパーを見ると、その手が痛む・・・。
私の「来た道」は長くなったが、次第に短くなる「行く道」がそこにあるのだ・・・。