割り箸を見ると、芥川賞小説「月山」を思い出す。もう40年以上も前のものだと思うが、読んだのは10年ほど前。山形の出羽三山(冬は6mを超す雪に閉ざされるという奥深く)にあるお寺の守り人のおじいさんが、ひたすら割り箸を削っては、村人に分け与えて生きていた。別に、彼が主人公ではない。抑揚のない、暗く、淡々としたストーリー(ドキュメンタリーと間違えるほど)なのだが、歳を重ねた今、分かるものがある。そのテーマは「生と死」であったろう。「生と死の境目なんて大したことはない」なのか、「それでも生きるしかない」なのか、「世の中、理屈じゃないんだよ」なのか、「都会と辺境の地を比しても空しい」なのか・・・それにしても、たかが「割り箸」である(^◇^)