【生活保護受給者。金と社会】
73歳、山形県出身だ。一人娘は横浜辺りで結婚しているはずだが行方知れず、体を壊して働けなくなって生活保護を受けている。
同様の境遇の人たちが身を寄せるアパート(寮として一般企業が経営。受給者は受給額のうち一定額を寮費として払う)で暮らしている。個室があり、3食が提供される。
数カ月前に声をかけてから、よく話を聴く間柄になった。
1.コロナ対策で支給された10万円を寮で盗まれた。
2.畑を耕作しているが、やめろと言われた。
3.作った野菜を町の人にあげ、礼品をもらったら怒られた。
4.畑作りや掃除など、真面目にやっているといじめられる。
5.「働きたい」というと「余計なことをするな」といじめられる。
6.食ってばかりいて、他人の弁当まで食ってしまう奴がいる。
「寮を出て働きたい。畑仕事が好きで、体を動かしていたい。草刈りでもなんでもいい・・・。働かなくてもお金をもらって、寝る場所と食事がある。みんな、動けるのに働こうとしないで、人の足を引っ張る。自分は一人ぼっちで浮いている。こんなところにいたら、ダメになってしまう・・・」
彼の育てたほうれん草をいただいてお浸しにして食べたが・・・それはそれはおいしかった。
私は、行政と連絡を取り、面談をしてもらった。盗難については一緒に警察にも行き、事情を聞いてもらった。
今は「働き口を紹介して欲しい。ここを出て、自立したい」という彼の願いを、なんとか実現しようと思案している。
私は彼に、冬場に新潟から東京に出稼ぎをしていた亡き父の姿をダブらせてしまうことがある。一歩間違えば、父もこうなっていたかもしれない・・・。一方で、働く意欲のある人間を生かせない社会システムと、楽して生きることに浸り流されてしまう人間の業に失望を抑えられなかった。
私たち日本という国の暮らしは、こういったこと(様々な行政給付など)から、意味のない大型公共投資、一部の人間の利権争い、本当に必要な福祉、教育、公共投資、社会保障まで、国民のレベルに頭打ちされた中でバランスがとられているのだ。